先日所要でNewYorkへ行ったときに、奈央さんが来年日本で舞台公演をされるJez Butterworthの“The River”の
プレビュー公演を観劇しました。2012年のイギリスでの初演でも、Michael Billingtonが2012年10月27日のTheGuardian紙上の批評で、“I only wish that more people could get in to see it.”と書いていたように、今回のヒュー・ジャックマンの舞台も素晴らしく、原作の英語のセリフにも素敵な言葉がたくさんあったので、日本で奈央さんたちが日本語でこの作品をどうアレンジして創り上げていくのかにも大変興味があります。
日本の舞台のサイトにはまだ情報が少ないので、英語版のあらすじを紹介すると、
【釣りを楽しみ、官能的な週末を過ごすために、世捨て人の漁師である男が女を連れて郊外の小屋にやってきます。しかし、二人の間にははじめから緊張感がただよっています。女は男と夕陽を見たいと言い、男は女を鱒の夜釣りに連れて行くつもりだと言います。 二人の主張はまったく正反対で、彼らの間に緊張感を生み出しています。ひと悶着のあと、男は女をたぐり寄せ、二人は去っていきます。次のシーンでは、舞台は突如暗転し、物語は、あたかも同じ夜の、同じ小屋に戻ったようです。しかし、入ってきた女は、違う人物で】・・・という話。
ブロードウェイの劇のHPでは、以下のようにあらすじが紹介されています。
“On a moonless evening, a man brings his new girlfriend to a remote cabin for a night of trout-fishing. But before the night is over, it becomes clear that nothing is as it seems… and as memory collides with desire, the truth becomes the most elusive catch of all.”
違う女性が入れ替わり登場する演出により、“漁師の男が過去に失った人を思い出そうとしているのでは?”と暗示させる部分があり、魚を釣ることについてはもちろんのこと、愛を”釣ること”、真実を”釣ること”の両方を掛けて、そのとらえどころのなさを描いている劇。
イギリスでも、
『魅惑的でロマンティック-この濃密な三人芝居では、心に響く詩的な言葉と、見事にパズルがはまっていくような展開の、惹き込まれる応酬が繰り広げられている。』(英Independent紙)
『THE RIVERは、捉えがたいが、スマートで、深い作品だ。それは、一瞬と永遠のようであり、いつも同じように見えて、常に変化している川の水面のようである。 不気味な物語だが、演出家イアン・リックソンの手によって魅力的に舞台化されており、とても素晴らしい作品といえる。』(英FinancialTimes紙)
と評価されています。
作者のJezは戯曲を書く行為を“It’s like going deep-sea diving”(深海をダイビングするようなもの)とインタビューで答えていますが、一字一句を模索しながら無から創り上げていく世界の面白味が舞台演劇にはあるので、奈央さんの日本での舞台も、若い世代にたくさん観てほしいなと願っています。
参考までに:
作者のJez自身は“The River”についてこう説明しています。
“I may bring other women here, to this place, and I may tell them I love them, and make love to them. But they will be impostors. And I will be a ghost. Because it means I will have lost you. My body, my brain, my lungs, my stomach, my guts, legs, arms will be here but I won't be. I will be out there, looking for you. And if we meet somewhere, at a restaurant, or a party and I'm with someone, I want you to know that they are by my side only because you are not. And she will be beautiful. And I will be laughing and smiling and she will be laughing and smiling, but she will be laughing at a lie. Because all I will have done to that person is lie to them. All I will do to anyone else, forever, from this moment forward, anyone who isn't you, is lie. I have no choice.”
― Jez Butterworth, The River
早速、スクショで保存しときました。