コーヒーが好きだ。
毎日朝食の後には必ずコーヒーを飲む。仕事で朝が早くても、コーヒーを魔法瓶に入れて持って出る。朝のコーヒーはわたしのスイッチを確かにオンにしてくれる。
いつから好きになったのか、思い出せない。
高校一年生のときに仕事を始めてから、コーヒーと出会う機会がかなり増えた。テレビ局に挨拶に行けばコーヒーが出され、取材でも当たり前のようにコーヒーが目の前に置かれ、撮影現場のポットに入っているのもコーヒーだ。紅茶はない。
コーヒーは大人の飲み物だと思っていた。その頃のわたしは、ミルクを入れても苦いと感じるくらいにコーヒーが苦手だった。
だけど、あらゆる場面で、好意を持って出されるコーヒーを一口も付けずにいるのが申し訳なくて、なんとなく口を付けるようになっていった。この仕事をしていく上で、コーヒーを飲めるようにならなくては、という半ば使命のようなものを感じながら飲んでいた。
「ミルクを入れたら飲めますよ」なんぞ、自慢することでもないのに、コーヒーが飲めないマネージャーさんに対してやけに誇らしげに言っていたのは、大学に入った頃だろうか。懐かしくもあるが、今思うと恥ずかしい。
そうして徐々にコーヒーに馴染んできて、使命感が憧れに代わっていった。
コーヒーへの憧れと言えば、ジム・ジャームッシュ監督の「コーヒー&シガレッツ」のインパクトは大きい。
大学時代に観たこの映画、正直ストーリーはあまり覚えていない。それもそのはず、今Wikipediaで調べてみたら、「登場人物がコーヒー(時に紅茶)を飲み、煙草を吸いながら、とりとめもない会話をしているだけの映画」(しかも“だけ”の部分が太字で強調されている)とのこと。記憶に残っている色んな場面が繋がらなかったのは、11の作品からなるオムニバス映画だったからかと納得する。
何がそんなにインパクトがあったかと言うと、画が、とにかくかっこよかったのだ。もっと詳細に言えば、コーヒーとシガレッツが並んだテーブルを、真上から捉えたカットがかっこよかった。それによって、コーヒーがものすごくかっこよく見えたのだ。そしてモノクロが大人のかっこよさを何倍にもしている。
最近でもカフェで出されたコーヒーの写真を、真上のアングルからつい撮影してしまうのは、確実に「コーヒー&シガレッツ」の影響だ。そこにシガレットがないのが残念だが。
Kさんの「Music in My Life」のミュージックビデオからも、「コーヒー&シガレッツ」感を感じるのは、わたしだけだろうか。モノクロだし、ファーストカットがまさに、コーヒーとシガレッツが置かれたテーブルの真上からのアングル。シガレットの煙が作り出す雰囲気も相まって、そこで歌うKさんがめちゃくちゃかっこいい。曲も好きだし、何回も観たくなるミュージックビデオの一つだが、それでもやはりシガレットには憧れなかった。
このように映像作品からコーヒーへの憧れを膨らませ、いまや、コーヒーは必需品だ。なくてはならないものになっている。
初めはドリップバッグで手軽に淹れていたけど、スーパーで挽かれたコーヒー豆を買ってきてドリップし始め、挽かれていない豆を買ってきて家で挽くようになり、やがてコーヒー屋さんに言ってコーヒー豆を選んで買うようになり、最近は生豆で置いてあって注文してから焙煎してくれるお店でコーヒー豆を購入するようになった。
コーヒーの淹れ方は完全に自己流でやってしまっているから、一度ちゃんと教わってみたいものだ。お湯を注いでしばし蒸らす時間を作った方がいいと聞いたことがあるが、せっかちだから待っていられない。
待ててこそ本当に大人の飲み物なのだろうなぁ、と思いながら夕食後のコーヒーを一口。夜のコーヒーはまた、スイッチをオフにしてくれる。
わたしの一日は、コーヒーとともに始まり、コーヒーとともに終わるのだなぁ、と上から見てふと気づく。
確かにコーヒー豆から挽いて入れたコーヒーは、おいしいですよね。
以前はやっていましたが、最近は面倒臭くなったせいか、スティックタイプのコーヒーで済ませてしまいます。
また、気が向いたら、コーヒー豆から挽いたコーヒーを飲んでみたいと思います。