近頃、我が家の猫の目つきが悪い。
そんな風に感じるのは気のせいだろうか。
仕事帰りに実家に寄ると、二匹の猫はキャットタワーでだいたい鎮座している。わたしが近づくと、一匹は、さっきまで寝ていただろうに出せる限りの俊敏さでソファの下へ潜り込み、もう一匹は薄っすらと開けた目でこちらを見やると、すぐに睡眠に戻る。
なんだ、これ。一方では警戒され、一方ではスルー。
ふと思い出す。ついこの間まで、玄関の鍵を開けている音に反応してか、玄関まで来て出迎えてくれていたはずなのに。帰るときには、リビングの扉のガラスから真ん丸お目目で見送ってくれたはずなのに。
わたしは来るたびにおやつをあなたたちにあげている、あの「ちゅ~る姉さん」ですよ。
あの頃を思い出してほしくて、わたしは今日もおやつをちらつかせる。
すると、真ん丸お目目との再会が叶う。先ほどまで警戒心むき出しだった子は、上目遣いで近づいてきたと思ったら、近くでちょこんとお行儀よく座る。スルーしていた子はわたしの足元にスリスリと体を押し当て、“みゃあ”と話しかけてくる。
もう、それだけで満足なのだ。おやつをあげた後に撫でようとして逃げられても、それでいい。
わたしは気が付いた。
目つきが悪いのは、寒さのせいではないだろうか。
寒くなってきた。すると、眠くなる。できれば動きたくない。昼寝の邪魔をされたくない。そりゃそうだ。わたしだって、そうだもの。
猫も寒さには勝てまい。
コタツにおいで。わたしと一緒にコタツに入ってくれれば、それでいい。目つきが悪かろうと、わたしはたぶん、うたた寝をして気づかないから。
「ご飯だよ」
そう声を掛けられて、猫とわたしは目を爛々とさせ、食卓につく。
片想いはつらいですねf(^_^)